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  • 執筆者の写真ishidamichiyuki

No.2 森に降る雨は優しい

先月の九州の豪雨災害の翌日、その雨雲が信越地方にもかかってくる最中にいつもの森へ出掛けた。ここ数年、台風や大雨が予想される日にわざわざ撮影に出かけてきた。土砂崩れで途中の道路が塞がる危険もあり、よくないことはわかっている。だから誰も誘わない。


濃い霧に包まれた雨の峠道を慎重に自転車のスピードで進んだ。ヘッドライトに照らされる数メートル先は真っ白で、視界はほとんどない。当然ながら一台の車ともすれ違うことなく峠には深夜に到着した。数日前に通って道路状況は確認してたとはいえ、人には絶対に勧められないドライブ。ここで車中泊し、目的は翌朝ここから入る森。クルマのヘッドライトを消すと自分の掌も見えない。まぶたを閉じても開いても変わらない本当の真っ暗闇。日常生活では体験しないと思う。こんな場所で寝ることも普通の神経では考えないでしょうが、どういうわけかボクは平気だ。


激しく屋根を叩く雨の音で目を覚ますと蒼く白んだ空に樹々が大きく揺れている。気がつくと車も揺れていた。普通なら車外へ出ることも躊躇する雨の中、いつものように準備を始めた。こんな時でも一歩中に入ると森はとても優しいことをボクは誰よりも知っている。





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