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写真工房 道
横内流スナップ
政府の乳利用の奨励策もあり、農村では山羊の飼育が広まった。横内の写真に山羊を撮ったものがいくつかあるが、山羊そのものよりも ”白” を強く意識したように思える。白黒写真では特に重要となる黒と白。黒は探さなくても常にある影。一方、山羊や鶏の白、白いシャツや白い帽子、落下傘や白い紙風船など、子供たちを捉えたショットの中にも要所での白が印象的だが、横内が自ら作って子供たちに遊ばせたようだ。モデルにされた長男の祐一郎氏によれば、撮影に出かけるときにいつも「これに着替えろ」と白い帽子やエプロンを渡されたそうだ。したがってそれらはみな演出の小道具ということになるが、もちろん当時の祐一郎少年にはその意味はわからない。山羊も鶏も初めからカメラのことなど意に介さないし、子供たちもすぐに写真のことなど忘れて無心で遊ぶ。長女のまさ子さんによると、カメラを構えてからもなかなか撮らなかったという。注文をつけられ怒られ、いつまでたっても撮らないからとても嫌だったと当時を振り返って笑う。
光と影そして借景をイメージし、子供たちが演出を忘れて本気で遊び始めるまで待つ。そしていつの間にか瞬間を切り撮る。それが速写性能で劣る乾板式カメラで演出を感じさせない横内流の撮影術、撮られた写真はまさしくスナップだ。
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