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写真の可能性 広告写真のこと

松本の伝統野菜 松本一本ねぎ。発祥は松本市東部、横内家のある筑摩三才地区。その歴史は古く江戸時代には徳川将軍家に献上されるようになり、明治以降も東京への贈答品として扱われた。その後いったんは廃れたが、世界恐慌の煽りを受けた養蚕からの転換を図り、横内家でも栽培に力を入れた。

荷札の宛名に東郷平八郎、頭山満、荒木貞夫の名が見える。

“献上”と書かれた説明書きには “日本アルプス高原名産松本ねぎ”の文字と共に横内が撮影したアルプスの写真が使われており、清らかな水と、その水で育った美味しいネギを連想させる。

 

他にも森永チョコレート、サロメチール、キッコーマンなど、当時の新聞等に盛んに広告を掲載していた企業に関連した写真をいくつも撮影している。当時の広告はまだ文字とイラストによるものが主流で、写真を使ったもの自体も珍しいが、特筆すべきはそのどれもが商品そのものの写真ではなく、企業や商品のイメージ広告であることだ。写真がまだ”晴れの日の記念”でしかなかった昭和初期に彼が写真の未来に無限の可能性を夢見ていたことが伺える。

 

 

横内が病に倒れたこと、そしてその後の社会情勢の悪化により実際にこれらの写真が広告に使用された記録はない。

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