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  • ishidamichiyuki

No.6 ブナはいちばんふつうの雑木だった



「山野に生えるいちばんふつうの雑木、たきぎや炭にする」これは60年前の三省堂国語辞典のブナについての記載で、ブナの森に魅了され撮影を始めた当初に偶然見つけたものです。かつてはいちばん普通にあったという事実に驚き、そして燃やす以外には役に立たないという当時の認識に愕然としました。60年後の現在では森林の40%が人工林となり、ブナは雪深い山間に僅かに残るのみで、白神山地の原生林は貴重な世界自然遺産です。


「もしも今でもブナがいちばんふつうの雑木だったなら…」そのとき想い描いた風景から今のボクの写真活動は始まり、そしていま起きてる不都合な出来事が次々につながり始め、この間違った認識のもとに国策で行われた大規模な原生林伐採と人工林化こそが今の社会に起きてる様々な問題の元凶だと考えるようになりました。


「伐って、伐って、伐りまくったー! あれがいけなかったなぁ…」


これは写真展を始めた当初に、かつて原生林伐採に従事していたというご老人から聞いた後悔の念で、とても印象に残ってます。他にも当時を知る何人もの人から同様の話を聞くことができました。山にブナが生えてることは後進性の証明ともいわれ恥だった。「ブナ狩り」と呼んだそうです。こうして豊かだったこの国の原生林は、あっという間に姿を変えました。人にとって60年は長い時間ですが、何千年、何万年という時間の中でその地の気候風土に適応してきた森の植生や生き物にとってはまさに、あっ!という間の劇的な変化です。環境への様々な悪影響を危惧して人工林化を躊躇した山主もいたと思います。しかし国は補助金をばらまき、将来必ず儲かると嘘をついて人工林化を進めた。前述した後進性の証明だとかブナ狩りだとか、逆らえない同調圧力があったことは容易に想像できます。


結果は、もちろん儲かるはずもなく木材価格は暴落し、後に始まった「緑のオーナー制度」も破綻しましたが、これについてはまた別の機会にします。近頃の特殊詐欺事件など比べ物にならない国家による悪質な詐欺です。木材価格が暴落した理由について世間で言われてることも殆ど嘘だと思っています。国策による拡大林業の失敗を誤魔化し、その責任から逃れ、それでもまだ林業を続けるためにでっち上げた嘘。地球温暖化問題もその一つだと思ってます。


ボクがこれまで話してきた森の機能、役割それらを犠牲にしてまで国が人工林化を進めた背景に何があるのか?木材価格が暴落し儲からないことが明らかなのになぜ嘘をついてまで林業を続けるのか?林業衰退の原因としてよく言われる価格の安い輸入材に押されたという嘘、かつて栄えたと言われる林業最盛期の嘘、木材生産という単なる金儲けを第一次産業の農林水産業という位置づけで、国民の生活を支え国土を守っているかのような錯覚を植えつけてきた教育の嘘…ブナの森のことを話すとき、それを壊してきた林業の大きな嘘と闇に触れなければなりません。前にも言ったようにネット社会は玉石混交。ボクは学者でも責任ある立場でもない、唯の写真好きのオッさんなので無責任に思うことを話します。間違えることはあると思うけど、嘘はつきません。嘘をつく理由がないからです。これまで新聞やTVで言われてきたこととずいぶん違うのですぐには理解出来ないかもしれませんが、こんな考えもあるのか、というくらいでいい。大事なのは、これまで通説として言われてきたことを疑い、自然の摂理に沿って自分で考えること。 "みんなが言ってるから" は無しです。


ブナの森を流れる川では大雨が降っても急激な水位の上昇はない。もちろん多少の濁りと共にゆっくりと水位は上がるが、黄土色の濁流となることはない。また、雨が降らない日が続いても森から染み出す水で急激な水位の低下もない。このため水辺の生き物たちの環境は一定に保たれる。






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